上村建設工業株式会社

代表者:代表取締役社長 蜂谷 真弓
従業員数:15名
事業内容:総合建設業

エグゼクティブサマリー

せっかく人材を育てていっても5年以内に離職する傾向があり、自分の成長が見えづらく、退職を希望する人が増えていました。分析した結果、客観的な評価基準がなく、社員が正当に評価されていないと感じていることが原因であることを特定し、客観的な加点方式で評価できるように評価制度を見直しました。結果、個々の社員のレベルに応じたアドバイスや具体的な指導ができるようになり、賃金体系と職位がリンクすることでモチベーションや自主性の向上につながりました。

背景
  • 自分の成長が見えづらく退職を希望する人が増えていた
  • 客観的な評価基準がなく、社員が正当に評価されていないと感じていた
取組内容
  • 上司の主観や減点方式の評価を止め、客観的な加点方式で評価できるようにした
  • 資格を取るために必要な、仕事への理解度を細分化して、評価することにした
成果
  • 個々の社員のレベルに応じたアドバイスや具体的な指導ができるようになった
  • 賃金体系と職位がリンクすることでモチベーションや自主性の向上につながった

担当者の声

入社当初は忙しい中、仕事を覚えることで精一杯な状況のうえ、教えてもらう事は少なく、現場で覚えなければならなかったため、自分の今後のステップアップもイメー ジすることが難しいと感じていました。自分と同じような思いを、新入社員の3人にはさせたくないとの思いから、出来る取り組みはないかと社長に相談をしたところ、今回の人事評価制度の導入に積極的に取り組む事になりました。

現在は、指導者側として新人に対して評価シートを基に話をしていますが、お互いの理解度をすり合わせるためには、指導者側も変わらなければならないと思っています。報告会では人によって評価の捉え方が多様であることを改めて感じており、コミュニケーションを積極的に取ることでお互いに考えていることへの理解度を近づけられるようにできたらと思います。

働き改革アドバイザーのコメント

社長をはじめ幹部社員や現場の所長も、若手技術者が育たないことに対し強い危機感を抱いており、全社一丸となり進めることに障害はありませんでした。改革を進めるに当たり、通常、組織の第一線で働く社員にとっては、総論は賛成だが各論に入っていくと、自分達の業務に影響するため、反対意見が散見されることがありますが、今回はそのような状況はありませんでした。

制度の導入にあたっては、あくまで若手技術者が主役であること、指導者と若手技術者の双方向コミュニケーションに重きをおくことなどに留意し「分かりやすいシステム」の構築に努めました。評価の仕方や指導の方法、そして何よりも指導者が若手技術者に寄り添い、知識習得や能力向上を目指すことに着目していただきました。

取り組んだ背景やきっかけは?

建設業界では、入社から5年目ほどになると、他で力を試したいという理由で退職を希望する人が増えてきます。今の環境では自分がどのくらい成長したのか見えづらいというのがひとつの原因ですが、企業側からすると、やっと一人前となって戦力として働いてほしい社員が辞めてしまうリスクにつながります。ところが、当社でも客観的な評価基準がなかったために、若い社員が正当に評価されていないのではないかという思いがありました。また、業界の風習である“習うより慣れろ”の考えでは人は育たないとも考え、教育方法を一新し、賃金体系の見直しや客観的な評価制度の見える化(職能・職位)を図ることにしました。

どの様な取り組みを行ったか?

以前の評価制度は、一緒に働いている上司による影響が大きく、経験年数と「このくらいの仕事ができるだろう」との主観的な判断で、主に減点方式で評価することが多かったのですが、例えば朝の挨拶や、遅刻をしないなど、上司が当たり前だと思っていることもしっかりと評価するようにしました。技術的な評価は資格取得を基準に判断しています。そのため、資格を取るのに必要な、仕事への理解度を細分化して評価することとしました。社員の習熟度についての評価は、上司と社員とのギャップを埋めていくことが重要だと考えました。例えば社員がやっと1日の仕事を覚えたのに対し、上司としては社員が1週間の仕事を覚えたことを期待していたとすると、お互いの考えにズレが生じてしまいます。上司が社員の成長過程を認識し、評価期間の中間ごとに評価していくことが重要なのです。

どの様な成果があったか?

以前は、社員によっては実力以上のレベルの仕事を与えてしまっていたため、上司が期待した仕事ができないという評価につながってしまっていました。全体的な評価基準ができたことで、個々の社員へのアドバイスがより具体的になり、「あなたはこの部分は出来ているが、ここは弱いのでこうすれば良い」といったアドバイスが可能になり、その人のレベルに合った仕事を任せられるようになりました。また、賃金体系と職位がリンクすることにより、自分自身が今やるべきことが目に見えてわかるようになったので、仕事へのモチベーションもアップし自主性が出てきています。社員側からは、どこまでやればキャリアUPできるのか、1~10まであるレベルの中で自分がどの段階にいるのかがわかりやすくなったとの意見が聞かれました。

今後は?

今後は、若手社員への評価を踏まえた育成をメインに進めていきます。現在の新入社員3名を上手に上手く育成し、一人前に育てることで、人材の流出を抑えたいと思います。また、評価制度の適切な運用により、若手社員の定着、人材確保につなげ、会社を成長させたいと考えています。この制度が定着すれば、生産性の向上や、工程管理や週休2日制へ向けた取り組みが可能となるため、さらなる改革を行っていきたいと思います。