浦田空調工業株式会社

代表者:代表取締役 浦田直門
従業員数:12名
事業内容:各種ダクト製造及び取付工事一式

エグゼクティブサマリー

以前と比べて社員の平均年齢が上がってきていた同社。人手不足によって労働時間が長くなり、残業や休日出勤も増えていましたが、それらのことがかえって新卒採用のハードルを高くしていることに気が付きました。社内にある仕事の標準化、作業時間の平均化などに取り組むことによって残業時間を25%も削減し、魅力ある職場づくりによって好循環を生み出す兆しが以前よりも確実に見えてきました。

背景
  • 社員の平均年齢が以前と比べて上昇している
  • 労働時間が長く、残業や休日出勤もあることから、新卒採用が見込めない
取組内容
  • 仕事を標準化し、自分の担当以外の作業も覚えてもらうようにした。
  • 「現場」と「工場」の情報共有を行う会議を設けた
成果
  • 仕事を標準化や、「現場」の進捗状況に合わせた「工場」での作業時間の平均化などにより、残業時間を25%削減することが出来た。

担当者の声

取付工事をしている現場との打合せを行い、工場での製造スケジュールを明確にしています。全員の各作業をよく計画することで、なるべく無理や無駄が出ないようにしています。その日の作業の進捗状況を見て、必要があれば残業もしますが、そのような場合には当日の作業目標を決めるようにして、長い時間の残業が無いようにしています。休暇を取る時には、会社やほかの社員に前もって伝えておき、当日の引継ぎをしっかり行うことで仕事内容などの情報を共有し、休むことによるトラブルを防ぐようにしています。また、休む人の仕事をカバーできるよう、1人だけしかできない作業というものをなるべく無くしています。今後は新入社員の教育にも力を入れて行きたいと思います。

働き改革アドバイザーのコメント

本件の成功は、様々な取り組みを行う上で、社員たちとざっくばらんな話ができたことが大きな要因かと思います。日常のコミュニケーションを大事にして、何かあったときにお互いに自由に意見を言える風通しの良い組織風土であることは、とても大事です。また、残業の削減にあたっては、この会社が現在検討しているように、残業削減のインセンティブを与えるため、削減された残業手当の一部を何らかの手当として新設し、給与総額の激変緩和措置を図っていくことも検討する必要があります。中小企業の場合、業務分担が不明化であることが多く、優秀な人材に業務が集中しがちですが、業務量の集中化を防ぐため定期的な業務配分の見直しにも取り組んで欲しいと思います。

取り組んだ背景やきっかけは?

当社は、以前と比べて社員の平均年齢が上がってきており、現在の平均年齢は42~43歳です。これはリーマンショックなどの影響で、中小企業にとって採用活動の厳しい状況が続き、新卒採用が思うようにできなかったことから、社員の年齢層の空洞化が起きたことが理由と考えています。これまでもホームページやハローワーク、商工会議所などで募集はかけてきましたが、なかなか採用につなげることが出来ませんでした。共同の求人説明会などに参加しても、建設現場での仕事は朝が早いことや、工期が迫ってくると残業・休日出勤も多くならざるを得ないなど、他の業種と比べて労働時間が長くなる傾向があり、就職希望者がいないというのが実情です。当社は将来的な事業規模の拡大に向け、若手の採用を積極的に行いたいと考えており、そのためには働き方改革による魅力ある職場づくりが重要であるという思いから、まずは「残業時間の削減」を目指すことにしました。

どの様な取り組みを行ったか?

当社の勤務場所は、大きく「現場」と「工場」の2つがあります。昔は工場で製品を作り、その人間が現場に入ることも多かったのですが、仕事量が増えてきたことから、現場は現場、工場は工場というように、担当を分担するようになりました。するとその人にしかできないような仕事が増える、すなわち仕事の属人化が起き、忙しくなれば残業が多くなり、休みも取りにくくなっていきました。そこで、ほかの人でも対応できるように仕事を標準化し、社員には自分の担当以外の作業内容についても、少しずつ覚えていってもらうようにしました。また現場と工場のつながりを強化するようにしました。これまでは特に情報共有する場はありませんでしたが、週1回、現場と工場の担当者が集まって会議を行い、現状の共有を図っています。さらに、これまでは現場の体制を1人の担当者に任せていたのですが、これを2名体制としました。

どの様な成果があったか?

現場と工場の情報を共有することで、製造作業や納期のタイミングをうまく調整できるようになりました。これまでは、現場の進捗状況によっては工場で待ちの時間が出来てしまったり、急ピッチで進めなくてはならなかったりと影響があったのですが、現場が調整することにより工場での作業時間の平均化を図ったことで業務上の無駄をなくし残業時間を減らすことが出来ました。かつては20時、21時まで残業することも少なくありませんでしたが、今は遅くとも19時までには終わっています。仕事を標準化したこともあり、残業時間は前年と比べて25%ほど削減できました。また、現場の人員を増やしたことでお互いにカバーできる業務が増え、一人一人の負担も減りました、現場だけではなく、工場の人間も含めて、残業時間を削減するためにはどうすればいいか、話し合いを重ね、いろいろな対策を進めている段階です。

今後は?

今後の目標としては、残業時間を30%削減したいと考えています。ただ、残業が減ると社員の収入も減ることになります。減った分の残業代は、成果報酬型の賞与などで従業員に分配していく流れを検討しています。2020年の東京五輪に向けて建設業界はますます忙しくなっていきます。先を見据えて、社員を増やし会社を大きくしたいと考えています。そのためには、新入社員の採用にとどまらず、女性や高齢者の雇用も視野に入れていきたいです。最終的には、若い人にとって魅力ある会社だと思われるようになりたいですね。