株式会社弘報社
代表者:代表取締役 吉田良一
従業員数:50名
事業内容:印刷物の企画・制作他
エグゼクティブサマリー
熟練の営業担当が病気になったことから、テレワーク(在宅勤務)に取り組み始めた同社。優秀かつ長く組織に貢献してきた人材に対応する形から始まったが、営業を行う部署と、営業を支援する部署を分けて、組織レベルでの見直しを行い、テレワーク化やテレワークによる効率化が図れる部分を見出す。その後も、会社全体の取り組みとしてテレワークを推進するとともに、就業規則を整備し、病気・育児・介護による離職を減らすための仕組みづくりを検討している。
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担当者の声
2週間に1度は通院する必要がありますし、抗がん剤の副作用もあり車の運転は難しいことから、在宅勤務で仕事が続けられるのは非常にありがたかったです。とにかく、時間を気にせず家で自由に仕事ができるのが良いですね。会社としては、まだ十分に整備されていないテレワーク制度ですが、もっとうまく在宅勤務を活用してほしいと思います。現時点では体調も良くなり、家族旅行へも行くことができました。お酒も少量は許可が出て、会社の忘年会にも参加しました。ストレスなく、適度に仕事をできていることが、体に良い影響を与えているのかもしれませんね。
働き改革アドバイザーのコメント
今回、熟練の営業担当が病気になったことから、テレワーク(在宅勤務)に取り組み始めたとのことですが、私からは残業時間の減少、労働力の確保のための営業・企画部門の生産性向上についてアドバイスさせていただいておりました。具体的には、現在の本社と東京における2拠点での活動効率をあげるため、Webカメラ等による情報共有とコミュニケーション頻度のアップを図る提案を行っていました。今回のテレワークの実施に際して、私からのアドバイス内容を活用していただけていたら幸いです。今回は病気治療と仕事の両立のためのテレワークでしたが、今後は育児、介護等を行う社員にも展開するなどして、ワークライフバランス、柔軟な働き方への取り組みを進めて欲しいと思います。
取り組んだ背景やきっかけは?
2年前に、ある社員が膵臓がんと診断され、余命1年~2年半の告知を受けるということがありました。闘病生活のために本人も退職を考えていたようですが、非常に優秀な営業担当者であったことと、会社にも長く勤めてくれていたこともあり、病気が原因で縁が切れてしまうのは非常に勿体ないという気持ちで、何とかこのまま会社にいてもらうことはできないかとか考えました。幸いなことに、抗がん剤の薬が体に合っていたようで、その社員は驚異的な回復を見せました。本人の働きたいという意思もあり、会社に前例はありませんでしたが、2018年2月から「テレワーク(在宅勤務)」という形で働き始めてもらいました。通院の必要や、抗がん剤の治療の副作用はあるものの、家で座って仕事をする分には問題ないとのことだったので、双方にとってテレワークがベストな働き方だと考えました。
どの様な取り組みを行ったか?
彼は営業担当でしたので、見積作成、ちょっとした原稿作成や校正まで一通りの業務をこなせるため、業務を依頼したい場面は多々ありました。しかし、個々の担当者から別々に依頼を行うと混乱するため、「営業支援チーム」という部署に所属してもらい、一切の仕事はそのチームの課長を通すという流れを作りました。最初は、名簿作りやお礼状作りなどできる仕事から始めてもらいました。家でデスクワークを行うほか、メインの営業担当が外出している間は、彼が顧客へ直接連絡し校正のやりとりをすることもあり、効率的に連携しながら、業務を行っています。当社では定年の60歳になると第一線から外れ部署のサポートに就くルールがあり、ちょうど社内にいた校正担当の社員が退職するタイミングと重なり、引き続き彼が校正業務を行ってくれて非常に助かりました。
どの様な成果があったか?
テレワークで家で仕事をするには、在宅勤務者の家族の理解も必要です。家族の了承を得られさえすれば、土日、朝夜関係なく自由に仕事ができるのがいいと本人は話していました。さらに、会社にいると電話対応などの雑務があるあることで、およそ1.5倍の時間がかかる感覚だと言いますが、自宅ならば作業に集中できることもメリットでした。我々のような、限られた人的資源で働かざるを得ない中小企業にとっては、テレワークは社員を大事にできる良い選択肢だと思います。それには、仕事を手配する側が、依頼する仕事の内容を理解して、うまく振り分ける仕組みづくりが重要だと感じました。
今後は?
今後は、会社全体の取り組みとしてテレワークを推進していきたいと考えています。テレワークについては、まだ手続きが未整備の状況です。今後、就業規則を整備し、病気・育児・介護などが理由で働きにくくなった社員が利用できるように進めていきたいと思います。さらにその先は、有給消化率の向上・深夜残業をなくす取り組みにもチャレンジしたいですね。そのためにも、生産性を向上させることが当面の課題だと感じています。