社会福祉法人 康和会 オレンジガーデン

代表者:理事長 宍倉喜久雄
従業員数:72名
事業内容:総合援助福祉施設の運営

エグゼクティブサマリー

人材確保が困難な介護業界において、採用対策と離職防止対策で成功している貴重な事例。入社後に3年以内で辞めていく離職率が平均15%となっていた同社は、優秀な人材が流出したり、人が育たないという問題を抱えていました。分析し、ワークライフバランスの改善が人材の流出を防ぐと考え、ICTの導入などによってデスクワークを中心に月170時間分の稼働を削減しました。また、1つの仕事を3人のスタッフが代わりにできるようになり、個々にさまざまな事情や条件を抱えながらでの就労が可能となりました。

背景
  • 平均15%の離職率、入っても3年でも辞めていくことで良い人材が育たない
  • ワークライフバランスの取り組みが人材の流出を防ぐと考えた
取組内容
  • 属人的な作業をなくし業務内容をマニュアル化
  • ICTを導入して、デスクワークの時間を削減
成果
  • 1つの仕事を3人のスタッフが代わりにできるようになった
  • デスクワークを中心につき170時間分の稼働を削減

担当者の声

事務長を筆頭にワークライフバランスに取り組むことになり、最初はその意味さえも知りませんでしたが、上司が嚙み砕いて説明してくださり、会議を重ねていくことで徐々に理解が深まりました。そして、ワークライフバランスの意図が現場に浸透していき、徐々に成果が出始めると、やればやるほど自分たちが楽になるので、取り組んでよかったなと思うようになりました。業務負担が緩和されたことで束縛される時間も自然と減り、ストレスも軽減されました。イライラしたまま家に帰ったり、休みの日に「明日は仕事か」とやる気が出なくなったりすることもなくなりました。施設全体が働き方を変えようとする風土になっていったことが嬉しいですね。

働き改革アドバイザーのコメント

人材確保が困難な介護業界において、採用対策と離職防止対策で成功している貴重な事例と言えるでしょう。「職員が定着しなければ、介護の質が落ちる。職員が働きやすい職場を作り、介護サービス向上に繋げたい」という熱い想いから生まれたワークライフバランス活動。当初は、活動そのものへの不安や懐疑の声もあったと聞きました。それでも5年7か月もの間、成果の伴う取り組みを継続できた成功の要因は、年次有給休暇の取得率向上や残業の削減という働き方改革の前に、業務の見直しを行い、生産性を上げるための業務改善を現場主導で取り組まれたことではないでしょうか。ICTの積極的な導入も、同様に職場の生産性向上を支えています。現場の職員が取り組みの成果を実感できることで、ワークライフバランス活動が加速し、継続可能となった素晴らしいスパイラルが見られました。

取り組んだ背景やきっかけは?

この業界の離職率は、平均15%ほどと言われています。おおむね3年周期で従業員が入れ替わっているのが実情です。社会的に少子高齢化進み、学生が減ってる中、厳しいイメージのあるこの業界には、なかなか人が入りません。仮に入っても3年で辞めていく今の状況では、良い人材は育たないことを危惧していました。なぜ3年で辞めてしまうのか。その理由を考えてみたところ、仕事とプライベートを切り分けた、ワークライフバランスの取れた働き方がでいれば、離職者が減り、人手不足が解消できるのではないか、そうすればよいサービスが提供でき、良いサービスが提供できれば経営も安定し、良い人材が採用できるという良いサイクルになるのではないかと考えました。そのような思いから2013年4月からワークライフバランスへ向けた取り組みを始めました。

どの様な取り組みを行ったか?

まず各部署のリーダー層とワークライフバランスについての話し合いを重ねました。そして、社員が日々やりたいように仕事ができていない状況を理事長に伝え、具体的な取り組みを開始しました。最初に、属人的な業務を徹底的になくすようにしました。それぞれの社員でやり方が違うため、担当者が休みのときにやるべきことがわからず、休暇中の担当者に電話で確認することが多かったのです。誰か1人しか知らないようなことが多いと、大変非効率です。少しずつ他の人でも同じ業務ができるようにマニュアル化を行いました。それから「朝夜シート」として、自分がその日にやるべきこと(例えば〇〇さんと10分話すなど)を書き出して貼り出し、スタッフ全員に共有することにしました。ただしやるべきことをやるためには、時間を捻出しなければいけません。しかし、サービスの時間は減らせないので、デスクワークの時間を減らすしかありませんでした。そのため対策として、ICT(情報通信技術)を導入するということに行き着いたのです。

どの様な成果があったか?

誰がやってもできるように業務内容をマニュアル化したことで最低でも同じ業務に3人のスタッフが代わりを務められるようになりました。代わりにできる人がいることで有給休暇が取りやすくなり、また休み中の社員に電話をする必要もなくなりました、この業界はアナログなやり方に慣れた人がほとんどで、ICTの導入には反対する人も多かったのですが、自分たちの負担が減るというゴールを共有できたことで、協力してくれるようになりました。例えば、パソコン作業でよく使う文章を定型化することで、デスクワークの時間を効率化することができました。そのようなことの積み重ねで月170時間分の稼働が削減できました。現在で達成度は7割ほど。これよりもまだ短縮できると考えれいます。成果として、2017年に厚生労働省のユースエール認定を受けることが出来ました。このことを従業員が想像以上に喜んでくれ、働くことに誇りを持ってもらえたのが一番のメリットです。従業員の意識の中に「効率化」という言葉が生まれ、社内風土が変わりました。今では、離職率は約6%に低下しています。

今後は?

今後は「ノーリフティングケア」の取り組みを進めていきたいと考えています。この業界では、職業柄、腰を痛める人が多く、そのことが退職の理由にもなっていました。デスクワークの時間を短縮できたことで、機械を使って利用者を移動させるゆとりができました。介護の業務を機械化することで、従業員の身体的なケアが図れます。今度はケアする側の年齢も上がっていきますので、体のケアはより重要になってくると考えています。