野水鋼業株式会社

代表者:代表取締役社長 野水俊明
従業員数:60名
事業内容:ステンレス鋼材販売/特殊鋼および非鉄金属各種鋼材販売

事例の概要

働き方改革に取り組むにあたって、生産性の向上が重要だと考え、真っ先に取り組んできた同社。取り組みの一環で社員アンケートを行ってみたところ、休みが取りやすい一方で「給与が少ない」という不満がありました。これまでは、仕事が増え、売上が伸びると、それらの業務をこなすために従業員数を増やしていましたが、業務の棚卸しを行い、いわゆる「なぜなぜ分析」に全社的に取り組むことで、1人当たりの粗利率の向上を目指しました。

背景
  • 生産性の向上についてあまり考えられていなかった
  • 休みが取りやすい一方で「給与が少ない」という不満があった
取組内容
  • むやみに社員を増やさず、1人当たりの粗利益の向上を目指す
  • 適正な販売価格の見直しと、なぜなぜ分析を実施
成果
  • 年々1人当たりの粗利益が向上している
  • ぜなぜ分析などの「勉強会」が立ち上がり、社員の意識も変化

担当者の声

生産性の向上について取り組むようになってから、先輩からも「考え方が変わった」という声をよく聞きます。これまで「売上」で考えていたのを、「利益」で考えるようになったなど、社員の意識も変わってきていると感じます。また、お客様からの要望には何でも応える風土がありましたが、適正化に向けてイレギュラーな対応を少しずつなくしていくという動きもあります。取り組みを始めた当初は、どうなんだろうと社内も半々の雰囲気でしたが、少しずつ成果も表れており、みんな納得して「この方針で良かったんだ」という声が出てきています。

働き改革アドバイザーのコメント

生産性を阻害している問題点の再発防止のための真因追及(なぜなぜ分析)を実施しました。当初、考えられる原因の漏れ・理論的な飛躍・表現が曖昧等ありましたが、次第に漏れなく・飛躍なく・具体的な表現等がうまくできるようになり、真因に行き着くことができました。真因からの対策案も抽出できましたが、特に「飛んでくる火の粉を振り払う」対策案からもう一歩踏み込んで「火元を消す」対策案まで抽出できるようになりました。これらは非常に効果的な対策案ですので、今後は各対象職場全員で確実に移行していただければと思います。実行すれば職場のメンバーは生産性が向上したことを実感して頂けるものと確信します。

休みが取りやすい一方で「給与が少ない」という不満も

私は現在、社長付きアドバイザーという立場を任されていますが、日ごろから「生産性」というキーワードに注視していました。私は中途入社ですが、会社について色々と分析しているうちに、当社は生産性の向上について見直すべき点があるように感じました。そのような中、コンサルタントに働き方改革の無料相談ができるという情報をメールで見たのかきっかけで、取り組みを始めました。当社の平均残業時間は、全体で月に20時間、工場は30時間ほど。有給休暇の消化率は7割ほどです。会長や社長の考え方から元々休みがとりやすい風土がありました。ただ、社員アンケートを取ると「給与が少ない」という回答も多くありました。そこで労働時間や休暇取得率を維持したまま、給与の改善を図りたい、そのためには生産性の向上が必要なのではないかと考えました。

むやみに人を増やさず、1人当たりの粗利率の向上を

最初の取り組みとして、「1人当たりの粗利益の向上」を目指しました。これまでは、売上が増えると、仕事をこなすために社員を増やして対応していました。しかしこれでは、1人当たりの粗利益は伸びません。また一方で、販売価格の課題もありました。当社には「顧客第一主義」という理念があり、できるだけお客様の意向に沿って指し値で販売することが多かったのです。しかしそこは企業としてしっかり利益を上げ、社員に平均より上の給与を払うことも必要と考え、サービスの向上に努め、それに見合った適正な価格で買って頂ける努力をしました。さらにもう一つ、仕事が増えても社員を増やさずに済む方法として、「機械化」に向けた取り組みを進めています。これまで5~6人でやっていた仕事が3~4人でできるようになれば、生産性が向上します。まだ構想段階ですが、機械化を進める↑で新工場の建設を目指しています。また、生産性を阻害する原因とその対策を見つけられる「なぜなぜ分析」というものを行いました。「なぜ1人当たりの生産性が低いのか?」という問いから始め、社員が一人一人が、なぜを繰り返し考えていくことで、本当の原因に辿り着き、それに対する対策を自ら見出すことができる取り組みです。まずは営業のリーダーたちと週1回の勉強会を開き、自分たちで考えることの習慣づけを行っています。

働き方改革には、生産性の向上が必要だと考えた

働き方改革には、まず生産性の向上が必要だと考え、真っ先に取り組んできました。1人当たりの粗利益を見てみると、取り組みを行った後の2017年は前年比127%、2018年は前年比126%となる見通しです。徐々にですが、成果が表れていると感じています。前述した「なぜなぜ分析」の議論やシミュレーションなどを行う勉強会は半年ほど継続をできています。成果の一つとして、顧客から部品や素材についての質問があった時に、誰もがそれに答えられるようノウハウの共有をするようになりました。なぜなぜ分析を通じて、生産性に対する社員の意識も変わってきたように感じます。

販売価格の見直しも行い、1人当たりの粗利率が向上

今後は、更なる生産性向上に向けて、新工場などの設備投資を行うために、キャッシュフロー経営への転換を進めていきたいと考えています。中小企業では融資で経営をしている企業がほとんどだと思いますので、なかなかタイムリーに設備投資ができません。計画的な設備投資を行うために、キャッシュフローの考え方について勉強会などを通して浸透させていきたいです。そして、生産性の向上によって得られたものは、社員の労働環境の改善のために還元していきたいと思います。