株式会社吉田屋

代表者:代表取締役 武田将次郎
従業員数:204名
事業内容:「鴨川館」「別邸 ラ・松盧」「ご・遊庭」の宿泊施設の運営とレストラン・ウェディング事業を展開

事例の概要

働き方改革へ取り組むにあたって「業務効率」を改善することに着目した同社。全社的な5S意識の浸透による業務効率の改善に取り組みました。外部の専門家を招き、組織横断的な「委員会」の形成と全社キックオフで、部署間の連携をしながら5S活動を軸に様々な業務改善に取り組みます。取り組みを行って来た成果として、本来は不要であった業務や労働時間を削減することができ、その分、お客様サービスのための時間が向上しました。

背景
  • 片付けへの意識が習慣化していなかったため業務効率が落ちてしまっていた
  • 本来行うべきお客様サービスのための時間を確保したいと考えた
取組内容
  • 新たに5S委員会を立ち上げ月1回開催した
  • 全社キックオフを行い、全フロア共通のモデルケースをつくった
成果
  • 会社として5Sを評価する雰囲気が出てきたことで5Sに対する社員の積極性が増した
  • 5Sにより、物を探す時間が減り、お客様サービスのための時間が増えた
  • 部署間の連携をしながら、社員が自主的に業務効率を考えるようになった。

担当者の声

当館は365日稼働している宿泊施設なので、「明日使いやすいように」というのが従業員の本音であり、作業が終了してからの片付けという概念が希薄でした。気づいてみると、何年も使用していない物品が館内に溢れ作業導線を潰していました。5S委員会を月1回開催し、不用品の廃棄や、作業しやすい職場環境づくりを実施しました。物品を避けて姥久手の場所に行く等の不便さが解消されるとともに、物品の表示を工夫することで、探す手間が省けました。清掃パートさんは高齢者も多く、若い人たちに比べてどうしても作業効率が低かったのですが、上記の改善で働き易くなったと好評を得ています。月1回の委員会ですが、継続してもらえたらと思います。

働き改革アドバイザーのコメント

製造業から始まった5S活動が、最近で他の業種においても盛んに取り入れられるようになってきました。今回、老舗の観光旅館である吉田屋鴨川館が5Sを導入するメリットとしては、探す手間と片付ける手間を大幅に削減できること、新人でも簡単に必要なものを探せて、収納できるようになることが挙げられますが、これは業種問わず効果があります。旅館業は、部屋の寝具や備品、食器類など膨大な「モノ」を扱う業種であり、当館においても以前はモノの置き方に規則性がなく、出し入れに多くの手間がかかっていました。従業員の間でも何とかならないかという思いは強くあったが、どこから手を付ければよいかがわからないという状態が続いていました。今回の働き方改革を機会に、経営層からパートの社員まで全員が一致して5S活動の導入に取り組むこととなり、2か月という短い期間でしたが、予想以上の理解と効果を得ることができました。

365日で稼働をし続ける旅館業ゆえの習慣と課題

当館は365日稼働し続けていることもあり、「片付け」というものへの習慣が根付いていませんでした。そのため、お客様が集中する時間帯には、他の部門から応援を頼みますが、応援者は何がどこにあるかわからず、他の人に確認しているうちに、結果としてお客様を待たせる状況が起きていました。また、館内に倉庫がないために、日常的にあまり使用しない物の保管スペースで場所を取ってしまい、作業の邪魔になることもありました。労働生産性の面からも、そのような物を探す時間をなくし、本来行うべきお客様サービスのための時間を確保したいとの思いから、社内全体で「5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)」に取り組むことになりました。

外部のアドバイザーも招いて「5S委員会」を組織

以前から、月1回程度の安全衛生委員会の活動を行っていましたが、日々の忙しさから定期的に行われなくなりました。社内の人間だけでは中々進まないことから、外部のアドバイザーを招いて取り組むことになりました。取り組みを進めるには、まず組織化を行う必要があるとのことから、安全衛生委員会から分離させる形で、新たに「5S委員会」を立ち上げることにしました。委員会は月1回の開催で、毎月の課題と責任者を決めて行っています。また委員会には役員も参加し、5Sにおける改善提案の機会にもなっています。2018年2月に、社内を挙げて5Sキックオフ大会を開催しました。各フロアや必要なエリアに5Sメンバーと担当箇所を決め、組織図を作成して推進することにしました。最初の取り組みとして、館内の各フロアにあるパントリーについて、全フロアで共通性を持たせるべくモデルケースをつくることにしました。また、洗い場では食器の収納場所を可視化することで、誰でも対応できるようにしました。また備品・食材等では定数制を導入したことで、必要な分が不足することや過剰在庫の問題がほぼなくなりました。

全社的に本気で取り組んだことによって得られた成果

これまでの5Sの取り組みは、気付いた人が自主的に行っている程度で、たとえ行っていても評価されることもありませんでした。今回、5S委員会ができ、取り組みの内容を発表する機会ができたことで、会社としても評価していこうという雰囲気がでてきています。お客様が集中する時間帯の応援は、5Sにより誰が行っても物の場所がわかるようになったため、サービスに時間を費やす事ができています。全体的には、社員の意識も変わりはじめており、自主的に業務効率について考えるきっかけになっています。5S委員会が他部署の業務内容を知る機会にもなっており、横の連携をしながら業務効率を考えるようになったことも大きな成果だと思います。

接客の時間をより多く作り出そうという雰囲気に

今後については、様々な業務効率改善を課題にすることを計画しています。今回は5Sは物に対しての取り組みでしたが、今後はサービス等の見直しにより、『その1秒を削り出せ』をテーマとして考えながら、お客様へのサービスの時間をよりつくり出せるように各部署での見直しを進めていきたいと考えています。