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~時間単位年次有給休暇制度を導入しましょう!~

年次有給休暇の取得は働く人の健康と生活に役立つだけでなく、働く人の心身の疲労の回復、生産性の向上など会社にとっても大きなメリットがあります。

国では、2024年8月に「過労死等の防止のための対策に関する大綱」を閣議決定し、2028年までに年次有給休暇の取得率を70%に引き上げる目標を掲げています。

また、厚生労働省の調査(令和5年就労条件総合調査 結果の概況)によると、年次有給休暇の取得状況は、次のとおりです。

  • 労働者1人平均付与日数は17.6日(前年調査17.6日)
  • そのうち、平均取得日数は10.9日(同10.3日)
  • 平均取得率は62.1%(同58.3%)〔昭和59年以降過去最高〕

年次有給休暇の取得率は、はじめて60%を超えましたが、「取得率70%」の目標にはまだ遠いというのが現状と言えるでしょう。

国では、企業等が自社の状況や課題を踏まえ、年次有給休暇を取得しやすい環境づくりを継続して行っていくことが重要としています。

そこで、本コラムでは、年次有給休暇の基本事項から、時間単位の年次有給休暇制度のポイントについて紹介します。

年次有給休暇とは?

年次有給休暇とは、法律で定められ労働者に与えられた権利です。この権利は正社員、パートタイム労働者などの雇用形態にかかわらず、一定の要件を満たした全ての労働者に付与されます。

また、使用者は、法定の年次有給休暇が年10日以上付与される労働者に対して、毎年5日以上の年次有給休暇を確実に取得させることが必要です。

出典:年次有給休暇」の付与日数は、法律で決まっています│厚生労働省

「継続勤務」とは?

  • 事業場における在籍期間を意味し、勤務の実態に即して実質的に判断されます。

例えば、定年退職者を嘱託社員として再雇用した場合などは、継続勤務として扱う必要があります。

出勤率算定に当たっての留意点

  • 業務上の怪我や病気で休んでいる期間、法律上の育児休業や介護休業を取得した期間などは、出勤したものとみなして取り扱う必要があります。
  • 会社都合の休業期間などは、原則として、全労働日から除外する必要があります。

時間単位の年次有給休暇制度とは?

年次有給休暇は従業員の健やかな生活と心身の休養のための制度ですが、その取得率の向上が課第とされています。そこで、年次有給休暇の取得は原則1日単位ではありますが、仕事と生活の調和を図る観点から、年次有給休暇を有効に活用できるよう、就業規則への記載と労使協定の締結を行った場合には、1時間や2時間などの時間単位で取得することも可能です。

これにより、治療のために通院する時や、子どもの学校行事への参加や家族の介護など、働く人のさまざまな事情に応じて、柔軟に休暇が取得できることから、働きやすさの向上にもつながります。

ここでは、就業規則への記載と労使協定の締結のポイント等について確認してみましょう。

ポイント1 就業規則への記載

時間単位年休を導入する場合には、 就業規則に年次有給休暇の時間単位での付与について定めることが必要です。

出典:時間単位の年次有給休暇を設ける場合の就業規則規定例│厚生労働省

ポイント2 労使協定の締結

実際に時間単位年休を導入する場合には、就業規則の定めるところにより、労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者との間で、書面による協定(労使協定)を締結する必要があります。なお、この労使協定は所轄の労働基準監督署に届け出る必要はありません。

労使協定で定める項目

① 時間単位年休の対象者の範囲

対象となる労働者の範囲を定めます。仮に、一部の者を対象外とする場合には、事業の正常な運営を妨げる場合に限られます。「育児を行う労働者」など、取得目的などによって対象範囲を定めることはできません。

②時間単位年休の日数

1年5日以内の範囲で定めます。なお、前年度からの繰り越しがある場合には繰り越し分も含めて5日までとなります。

③時間単位年休1日分の時間数

1日分の年次有給休暇が何時間分の時間単位年休に相当するかを定めます。1時間に満たない端数がある場合は時間単位に切り上げてください。

 (例)所定労働時間が1日7時間 30 分の場合は8時間となります。

④ 1時間以外の時間を単位として与える場合の時間数

2時間単位など1日の所定労働時間を上回らない整数の時間を単位として定めます。

出典:時間単位の年次有給休暇を設ける場合の就業規則規定例│厚生労働省

時間単位年休を導入している企業の声

導入

  • 社員へのヒアリングを行ったところ、時間単位年休の導入希望が多かったことから、導入することにした。社員250名ほどの会社であるが、導入半年で延べ150人を超える社員が利用し、年次有給休暇取得率向上にも寄与している(情報通信業)

申請時期

  • 社員各自が自分の年次有給休暇取得希望日を予定表に記入し、部署ごとに調整をしてもらっているが、時間単位年休については、当日の申請も可能としている(建設業)

管理業務

  • 会社では、年次有給休暇制度を有効活用するため、時間単位年休を導入している。 しかし、労働時間管理が煩雑になるため、独自の労務管理プログラムを構築し、管理業務の負担軽減を図っている(飲食業)

最後に

年次有給休暇の取得は原則「1日単位」です。時間単位での取得は法律上必須ではなく、1日単位でしか使えないルールにしても問題ありません。

しかし、生活スタイルの多様化や育児・介護・通院等との両立など、働く人の意識が変わりつつある昨今、仕事と家庭の両立がしやすい魅力ある職場をつくっていくことは、企業にとっても人材確保・定着等へつながることが期待されます。

その第一歩として、働く人がもっと柔軟に休暇を取得できるよう、時間単位年休の導入を検討されてはいかがでしょうか?

厚生労働省では、時間単位年休の導入を促進するため、取組事例の収集・周知、就業規則や労使協定の規定例の情報発信等を実施していますので、ご参考になさってください。

なお、政府の規制改革推進会議は、時間単位年休について、上限を「年5日以内」から「年次有給休暇の付与日数の50%程度」に緩和し、取得できる日数を増やす中間答申(令和6年12月25日)を出しました。政府は今後、労働基準法の見直しを検討し、令和7年度中に結論を出すとしており、今後の動向が注目されています。

参考サイト:厚生労働省「働き方・休み方改善ポータルサイト」

企業の皆様が社員の働き方・休み方の見直しや改善に役立つ情報を提供しています。

 

 

https://work-holiday.mhlw.go.jp/

(参考資料):厚生労働省 「時間単位の年次有給休暇制度を導入しましょう!」

 

https://www.mhlw.go.jp/content/000560872.pdf

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