パワーハラスメント防止措置が中小企業事業主にも義務化されます

令和4年4月1日から、職場におけるパワーハラスメント防止措置が中小企業事業主にも義務化されました。セクシュアルハラスメント対策や妊娠、出産、育児休業に関するハラスメントとともに考えてみましょう!

なぜハラスメント対策が必要なのか

職場のパワーハラスメントやセクシュアルハラスメント等の様々なハラスメントは、働く人が能力を十分に発揮することの妨げになることはもちろん、個人としての尊厳や人格を不当に傷つける等の人権に関わる許されない行為です。また、企業にとっても、職場秩序の乱れや業務への支障が生じたり、貴重な人材の損失につながり、社会的評価にも悪影響を与えかねない大きな問題です。

令和2年度に厚生労働省が実施した「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、過去3年以内にパワーハラスメントを受けたことがあると回答した者は31.4%でした。また、都道府県労働局における令和2年6月の労働施策総合推進法施行後の「パワーハラスメント」の相談件数は1万8千件、「いじめ・嫌がらせ」の相談件数も令和2年度には約8万件であるなど、対策は喫緊の課題となっています。

 

厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査」(令和2年10月実施)
https://www.mhlw.go.jp/content/11910000/000775797.pdf

代表的な言動の6つの類型

職場におけるパワーハラスメントの状況は多様ですが、代表的な言動の類型としては以下の6つがあります。

  1. 身体的な攻撃(暴行・傷害)
  2. 精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)
  3. 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
  4. 過大な要求(業務上明らかに不要なことや逐行不可能なことの強制・仕事の妨害)
  5. 過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
  6. 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

※個別の事案について、パワーハラスメントに該当するのかの判断に際しては、当該言動の目的、言動が行われた経緯や状況等、様々な要素を総合的に考慮することから事案の状況等によって判断が異なることも考えられます。

 

厚生労働省「労働施策総合推進法に基づく『パワーハラスメント防止措置』が中小企業の事業主にも義務化されます!」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000855268.pdf

職場におけるパワーハラスメント

令和元年に改正された労働施策総合推進法において、職場におけるパワーハラスメントについて事業主に防止措置を講じることを義務付けています。併せて、事業主に相談したこと等を理由とする不利益取扱いも禁止されています。

職場におけるパワーハラスメントは、職場において行われる

  1. 優越的な関係を背景とした言動であって、
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
  3. 労働者の就業環境が害されるもの

であり、1から3までの3つの要素を全て満たすものをいいます。

なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しません。

職場におけるセクシュアルハラスメント

職場におけるセクシュアルハラスメントは、職場において行われる労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応によりその労働者が労働条件について不利益を受けたり、性的な言動により就業環境が害されることです。

職場におけるセクシュアルハラスメントには「対価型」と「環境型」があります。

「対価型」セクシュアルハラスメントとは

労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応(拒否や抵抗)により、その労働者が解雇、降格、減給、労働契約の更新拒否、昇進・昇格の対象からの除外、客観的に見て不利益な配置転換などの不利益を受けることです。

「環境型」セクシュアルハラスメントとは

労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど、その労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることです。

職場における妊娠、出産、育児休業に関するハラスメント

職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントとは、「職場」において行われる上司・同僚からの言動(妊娠・出産したこと、育児休業等の利用に関する言動)により、妊娠・出産した「女性労働者」や育児休業等を申出・取得した「男女労働者」の就業環境が害されることです。

妊娠の状態や育児休業制度等の利用等と嫌がらせとなる行為の間に因果関係があるものがハラスメントに該当します。

なお、業務分担や安全配慮等の観点から、客観的にみて、業務上の必要性に基づく言動によるものはハラスメントには該当しません。

職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントには「制度等の利用への嫌がらせ型」と「状態への嫌がらせ型」があります。

「制度等の利用への嫌がらせ型」とは

男女雇用機会均等法や育児・介護休業法が対象とする制度又は措置の利用に関する言動により就業環境が害されるものをいいます。

「状態への嫌がらせ型」とは

女性労働者が妊娠したこと、出産したこと等に関する言動により就業環境が害されるものをいいます。

ハラスメント防止のために事業主が雇用管理上講ずべき措置とは

職場におけるパワーハラスメントやセクシュアルハラスメント及び妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントを防止するために、事業主が雇用管理上講ずべき措置として、主に以下の措置が厚生労働大臣の指針に定められています。

事業主は、これらの措置について必ず講じなければなりません 。

なお、派遣労働者に対しては、派遣元のみならず、派遣先事業主も措置を講じなければならないことにご注意ください。

  • 事業主の方針等の明確化および周知・啓発
  • 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  • 職場におけるパワハラに関する事後の迅速かつ適切な対応
  • 併せて講ずべき措置(プライバシー保護、不利益取扱いの禁止等)

※このほか、職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントについては、その原因や背景となる要因を解消するための措置が含まれます。

参考資料

厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000611025.pdf

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